「TRON Legacy」は想像力が現実に追い抜かれた映画だった

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現在公開中の「TRON Legacy」ですが、勤務先のAMNマーケティングの手伝いをしている関係で、ブログに書くことを条件に前売り券をもらいました。ということで、新宿バルト9 で 12/25(土) 23:10の回を早速観てきました。


なんというか、ジェフ・ブリッジス万歳! な映画でした。ジジイのジェフ・ブリッジスと若いジェフ・ブリッジスを両方たっぷり堪能できて、他のことは案外どうでもよくなりました(笑)。


現実空間は2Dで電脳空間に入ると3Dになるという演出はなかなか面白く感じましたが、いかんせん電脳空間の色調が単調なせいで 3D の立体感はイマイチどころではなく、正直 3D の必要はないくらいでした。


さてさて、1982年の前作「TRON」の頃はまだ世の中にはインターネットは存在せず、ARPANET が NCP という TCP/IP の前のプロトコルでつながっていた時代です。映画で CG を使用しているというだけで物珍しさで話題になり、ギークがこぞって観に行ったものです。前作の TRON にはその当時の想像力をフルに動員した電脳世界が描かれていて、荒削りながらもそれなりのリアリティを持って楽しんだものでした。


今回の「TRON Legacy」では 28 年間の CG 技術の進歩により、よりディティールを増した電脳世界が描かれています。でも世界構築の基本コンセプトは 28 年前のまま変わらず、ただ単にディティールだけを増した世界がそこにはありました。なぜ単調な色調なのか、なぜ都市の周りには荒野が広がっているのか、なぜ敵のスピーダーバイクは都市の外に出られないのか、考え抜かれた形跡はありません。その意味では TRON の SF 的な側面はごっそり抜け落ちて、単なるファンタジーになってしまったとも思えます。


28年間の間にコンピュータ技術はずいぶん進歩しました。現在ではネットワークの考え方を抜きにしてコンピュータ技術は語れません。「マトリックス」を体験してしまった私達には、もはや TRON Legacy で描かれる電脳世界は薄っぺらいモノにしか思えず、その薄っぺらさに対しての納得できる説明もありません。


TRON Legacy を作ったスタッフたちが前作の TRON を非常にリスペクトしているのは、前作のテイストを残したメカデザインや、迫力が大幅増のスピーダーバイクのシーンなどを見ればひしひし感じます。だからこそ 1982 年に TRON が作られたという意味を考えて、2010 年なりの新しい想像力を発揮して欲しかったところです。ハリウッドにありがちな B 級娯楽作品としてはまぁ楽しめました。