Webサービス屋のIPv6対応の第一歩

7/11のJANOG22 2日目で「IPv4枯渇、あなたがお使いのWebサービスは生き残れますか?(通称:断絶セッション)」が無事に開催されました。遅くなりましたがそのレポートです。


当日は以下のようなネタリストを準備していました。(合間にちらっとスクリーンに出てしまったのは、このリストをevernoteで表示していた画面です)

  • どのような条件がそろったときに自社(あるいは他社?)はIPv6対応を進めていくと思うか?
  • IPv4/IPv6 を併用して運用することに関して、どのような情報を望んでいるか?
    • 技術的
    • 環境的(対応ISPiDCの状況など)
    • 政治的? (上司を説得するマーケティング資料など)
    • エンドユーザ教育?
  • IPv6対応に関する予算の相場は算出できる状況にあるのか? まだまだ技術が一般化していないので個々のプロジェクトが独自にコスト評価をしなければならない状況なのか?
  • IPv4の枯渇状況があまり一般には知られていない状況だが、広く告知するにはどうしたらよいか?
  • IPv6ならではのコンテンツは本当に考えられないのだろうか?

この中から実際に話題として使ったのは2つくらいでした。時間が若干押し目だったこともあって会場からの質疑応答に早めに移行したのですが、会場からも活発に意見や質問が寄せられて、とても盛り上がるセッションとなりました。ちょうど前日にライブドアの2ch IPv6板の発表があったりして、伊勢さんにパネラーとして参加してもらったのもタイミング的にばっちりでした。


JANOGは基本的にISPや機器メーカなどネットワークの下のレイヤーの人の集まりなのですが、パネラーとして参加されたドワンゴ佐藤哲也さんとpaperboy&coの宮下剛輔さんWebサービス事業者お二人と、会場の参加者とのいろいろなギャップが予想通り浮き彫りになって個人的にも興味深いセッションでした。


なかでも会場から意外と受け止められた点のひとつは、Webサービス屋にIPv4の枯渇問題がほとんど知られていないということです。過去のJANOGミーティングではもう何回もこの問題を取り上げていて、もはや常識と化しているIPv4枯渇ですが、普通のWebサービス業界では恐ろしいほどに知られていませんし、当然ながらIPv6移行への危機感など持ちあわせていません。


IPv6で実験的に運用しようと思ってもIPv6接続をサービスメニューで用意しているiDCはとても限られているという問題では、会場のiDC事業者の方の「客からの要望があればIPv6接続の提供を検討するが、現在のところそういうニーズは全く寄せられていないのでこちらからアクションも起こせない。IPv6が欲しい人はどんどん声を上げてくれ」という意見が、互いのお見合い状態を端的に表していました。


さすがに本格的な議論に踏み込むことはありませんでしたが、問題点を共有する第一歩としてはまずまずだったと、セッションを企画した人間として思います。もちろんこのまま終わりにする訳ではなく、この問題は多少切り口を変えてまた別のイベントで取り上げたいと考えています。


JANOG22の前日のセッション「IPv4アドレス 販売終了のお知らせ?〜ISPによるNATで起きること〜」の最後で明らかになったように、Carrier Grade NATで問題のすべてが解決できる訳ではなくNATはあくまでもつなぎの技術にしかなりません。本命としてはIPv6しか現実的な選択肢は存在せず、IPv6に嫌が上でも対応せざるを得なくなる世界が目の前に来ています。そろそろ腰を上げて準備を始めないといけません。