断絶を超えて -JANOG22のIPv4枯渇セッション-

断絶解消への取り組み

今年初めに開催されたJANOG21に参加した後で以下のエントリを書きました。

私が危惧しているのは、インターネットの技術がどんどん細分化されていくにつれ、各レイヤーのコミュニティが断絶してお互いのことを理解しないまま、不毛な批判の応酬をしたり、結果として効率の悪いシステムを作り上げてしまうことです。

ネットワークオペレータとWeb開発者の断絶 - Blog::koyhoge

断絶という単語がキャッチーだったせいもあってかそこそこ話題になりまして、その後同様の問題意識を持った方々と色々な場所で話し合う機会を得ました。そうして、@tcshさんが言いだしっぺとなって「Team断絶」という謎の集まりができ、各コミュニティ間の断絶を解消するためにできることをやっていこうと色々動き出しています。


その第一弾として、2008年7月10(木)〜11(金)日に開催されるJANOG22では、私がプログラム委員として参加してWebサービス屋向けのセッションをすることになりました。

IPv4アドレスの枯渇が現実的なスケジュールとして見えてくる段階になりました。
枯渇後の対策としてIPv6は未だ有力な候補ですが、現実にはなかなか普及が進んでいません。これまでIPv6への移行に関しては、主に基幹ネットワークとエンドユーザへの普及という視点で、様々な議論がなされて来ました。しかし自社で大規模なネットワークを構築せず、iDCなどのハウジングサービスを利用してユーザにWebサービスを提供する中小規模なサービス事業者の、IPv6への移行という視点での議論はこれまであまりされていません。


現在のインターネットでは、このようなサービス事業者がユーザに提供する様々なWebサービスが大きな価値を生んでおり、IPv4枯渇後の世界を考えるにも無視できない存在です。現状では、Webサービス事業者がIPv6に対しての準備を始めようにも、IPv6の接続性を提供しているハウジングサービスはまだまだ少なく、実験環境を用意するための壁も高い状況です。


そこで本セッションでは以下の関係者の方々を招き、Webサービス事業者のIPv6 移行に関する現状、今後の展開などについて議論を行います。

JANOG22: IPv4枯渇、あなたがお使いのWebサービスは生き残れますか?

IPv4アドレス枯渇への危機意識

私の周囲のWebサービス屋の人たちと話しても、IPv4枯渇への危機意識はあまり高くありません。現実にIPv4アドレスはまだまだ配られ続けているし、サーバ側で使用するグローバルIPアドレスを減らす手法はいくつかあるのでいざとなれば何とか乗り切れるかもしれないし、そもそもIPv6が一般に広く使われる世界が本当に来るのかどうかも分からない。私も含めてそう考えている人は多そうです。


しかし現実にIPv4のアドレスプールは着実に減り続けており、様々な予測を見ても2010〜2011年、つまり約2年半後には底をつくことが確実視されています。

サービスを提供するサーバ側は、現在すでに持っているIPv4アドレスで乗り切れるでしょう。でもIPv4枯渇以後、社会に確実に生まれるであろうIPv6アドレスしか持っていないユーザに対するサービスは現状のままでは行えません。その時を見込んで、今からIPv6でサービスを運用することに対する準備を可能であればしておきたいと考えるのは当然だと思います。これまでの運用ノウハウも一朝一夕に蓄積できたものではなく、日々の運用の積み重ねが重要だったことを考えると、2年半という時間は結構ぎりぎりのタイミングでしょう。


ところが現実を見てみると、我々Webサービス屋がサーバのハウジングをお願いするデータセンターのサービスメニューに、IPv6の接続サービスがある場合はあまり多くありません。試験的にIPv6でサービスを提供しようと思っても、現在は一部の例外的なデータセンターを利用するか、自社にIPv6の接続を引っ張り込むしか方法はないわけです。


今回のJANOG22のセッションでは、サーバ側でIPv6サービスの提供を受けたいときに何が障害になっているのか、また実際に多くのユーザにサービスを提供している事業者の方々は何を考えているのか、以下の方々をお呼びして議論したいと思います。

  • 株式会社paperboy&co. 宮下剛輔さん (mizzy.orgのひと)
    • ロリポップをはじめとする様々なペパボサービスについて伺います。
  • 株式会社ライブドア 伊勢幸一さん
    • 実際にIPv6環境を構築している立場として話を伺います。


普段はWebサービス屋さんがJANOGミーティングに参加する機会はなかなかないと思いますが、少なくともこのセッションだけは下位レイヤーのことを知らなくても十分楽しめるものになると思います。


JANOG22本会議だけならば参加費は無料です。すでに出席登録も始まっていますので、興味ある方はぜひご参加ください。またできることであれば、懇親会にも参加して色んな人と話をすることであなたの「断絶解消」に役立ててください。